『1手詰ハンドブック』レビュー&考察
言わずと知れた詰将棋本のロングセラーであるハンドブックシリーズから1手詰ハンドブックを紹介します。
- 作者: 浦野真彦
- 出版社/メーカー: 毎日コミュニケーションズ
- 発売日: 2009/11/25
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
- 購入: 4人 クリック: 12回
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本書の概要
詰将棋本と言えばコレ!と言えるくらい今では有名になったハンドブックシリーズです。
2012年発売の本書ですが実際に売れているようで、私は去年新品で購入したのですが2017年7月28日初版第19刷発行となっていました。
将棋本でこれだけ売れるのは凄いですね。
この売上げが信頼の証とも言えるでしょう。
問題数は300問(コラムを入れると301問)でボリュームたっぷり。
見開き4問の構成に関しては他のハンドブックシリーズと同じです。
他と違う点としては、やはり1手詰なので初心者を意識してのことだと思うのですが、駒の動かし方や将棋のルール(反則など)、1手詰のルール等について詳しく冒頭で触れた後に問題に入っていく構成をとっています。
(他のシリーズでは簡略化されている)
また問題の出題についても下記のような工夫が施されています。
◎最初の80問はテーマごと数問に渡って固めて出題
例:金の王手、開き王手など
◎残りの220問はランダムで出題
ヒントはありません。
評価・感想
去年購入して1周読んで放置していたのですが、今回再度読んでみました。実は最初読んだ時と今とで読了後の感想が違ったので、参考までにどちらも書いておきたいと思います。
1周目読んでの感想(去年)
1手詰は重要だ!馬鹿にしてはいけない!といったことをどこぞで耳にして、試しに『1手詰ハンドブック』を入手してみました。
解き始めたところ、あまりに簡単で拍子抜けし、正直これをいくら解いたところで上達しないな~と感じたのを覚えています。
ただそれでも300問解ききるのは意外にストレスで、最後の方はイライラしながら解いていました。
確か途中3問くらい開き王手の問題等で間違えました。
パッパパッパと解いていましたが、うっかりミスなのかどうなのか。
因みに当時は『5手詰ハンドブックⅡ』に大苦戦、『3手詰ハンドブック』も後半は苦戦していた覚えがあります。
2周目読んでの感想(現在)
この1年で5手詰以上はともかく、3手詰についてはそれなりに難しいものも含めてかなりの問題数を解いてきました。
その上で解いてみて、やはり簡単だな~という感想は同じですが、「このパターンか」という意識がより強くなったと思います。
「あ、これ3手詰の問題でこないだ間違えた形だな」とか。
図面を見ると持ち駒を見ずとも持ち駒の有無が感覚的に分かりますし、必要なところに駒がスッと入るイメージで解いていけました。
また、最後までストレスなく解ききることができました。
(これについては、詰将棋を解くことが習慣化した結果なだけかもしれませんが)
なお正答率については、
100%(300/300問)でした。
いつもどこかでミスをしてしまうので、1手詰とはいえ今回の結果は素直に嬉しかったです。
1手詰は上達に必要なのか【考察】
実力者の場合
それなりに将棋が強い人でも1手詰を解くことが重要だとする人達の主張としては、「詰み形をインプット」することが短手数の詰将棋を解く上では重要で、それが実践にも繋がるから、ということだと思います。(1手詰は詰将棋の中では最も詰み形に近い)
ただ「1手詰なんて簡単じゃ~ん、解いたところで強くならないよ」という考えが一般的だと思いますし、個人的にこの見解は概ね正しいと思います。
仮に3手詰がひと目でスラスラ解けるなら、1手詰で得られる恩恵は既に持っていると思って良いでしょう。
また、仮にスラスラ解けずとも3手詰を通して1手詰も解いているわけですから、詰み形を覚えるトレーニングと平行して読みの訓練もできて効率が良いと考える見方もあります。
ただ今回私が1手詰ハンドブックを解いてみて思ったのは、1手詰の中にも他の問題に比べて数秒答えが頭に浮かぶのが遅れる問題があったことです。
おそらくこれは私が無意識で苦手としている詰み形であって、これが3手詰となるとさらに解答に辿り着くまでのタイムラグが大きくなることが予想されます。
さらに7手詰ともなると頭に浮かぶ盤面があやふやなのも相俟って、最後の一手を発見するのに非常に苦労することになるでしょう。
苦手な詰み形の発見とその克服のため、たまにでも1手詰を一気に解いてみることも上達の上で意義があるのではないかと考えます。
(3手詰がひと目でスラスラ解ける人は、3手詰で弱点を探した方が効率が良いかもしれません)
初心者の場合
1手詰は初心者が駒の効きを覚えた後それが身になっているか確認する良い手段だと思います。
また将棋の最終目標である王様を捕まえる感覚を同時に養うことができるので、初心者には上達の上で非常に有用だと言えるでしょう。
また初心者は当然として3手詰以上が難しいと感じる人も、まず1手詰を数秒で解けるようにしてからでも本格的に3手詰に取り組むのは遅くないと思います。
少なくとも1手詰で苦労しているうちは、3手詰は解いていて全く解けず嫌になってしまう可能性が高いので、1手詰に集中して取り組みましょう。
そして自信がついたら3手詰に挑戦してみましょう。
最初は苦しいと思いますが、誰でも同じなので答えを見ながらページを捲っていくことをおすすめします。
因みに私は将棋を始めた頃正直1手詰を馬鹿にしていたので、3手詰から入りました。
それでも詰将棋が少しずつ解けるようにはなりましたが、効率が良かったかというと少し疑問が残ります。
現在は、素直に段階を踏んでおくのが吉だったかと思っています。
終わりに
1手詰は苦手な詰み形の発見・克服に有用であるとともに、いずれ短手数の詰将棋をひと目で解けるようにするための基礎を作るものだと思います。
今回自分なりに新たな発見があり、非常に有意義でした。
もちろん1手詰ばかり解いていては上達しないのは火を見るより明らかですが、たまにこうして工夫して活用していきたいと思います。