苦しんで強くなる将棋ブログ

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才能皆無だが、試行錯誤して棋力向上を目指す。日常ネタもたまに…

『プロの定跡最前線 飯島流相掛かり引き角戦法』レビュー

少し前の本ですが、気になって読んだ本がありますので紹介したいと思います。
飯島先生が書かれた相掛かり定跡に関する本です。



本書の概要

将棋世界2015年10月号付録の冊子です。
紙媒体のものは現在では入手困難ですが、電子書籍であればKindleで格安で手に入ります。
 
問題は次の一手形式で全39問。

 
飯島流引き角戦法と言えば、対振り飛車の戦法というイメージですが、本書は「相掛かり」がテーマです。
よって同じ飯島流引き角戦法でも全く毛色が違ったものになります。
 
ただ飯島流引き角を使う人には初手2六歩という特性上居飛車党の人が多いと思うので、相掛かりの考え方の幅を広げる意味でも読んでみて損はないと思います。


読むに至ったきっかけ

ここ数ヶ月極限早繰り銀を勉強していましたが、相手が振り飛車党であったり角換わりチックな将棋が嫌いな人だと角道を閉じられ拒否される確率が高くて、成果があまり出ていませんでした。

よって方向性を変えて、後手を持った場合のレパートリーを広げようと最近飯島流引き角戦法をコソコソと勉強していました。
極限早繰り銀はあくまでも先手の戦法ですからね。被らなくていいかなと。

本書はその流れで偶然存在を知った次第です。
相掛かりについて軽く勉強したことがあったことに加え、対振り飛車の場合とどう違うのか興味が湧き、購入しました。


読んだ感想

まず言いたいのは、振り飛車の一般的な飯島流引き角戦法は居飛車側も左美濃穴熊に囲って安心して戦えるのが魅力ですが、本戦法はその逆をいきます(笑)

また先手番の戦法です。

相掛かりという戦型からも分かるように角の頭を狙うように敵が攻めてくるので序盤から非常にスリリングで、引き角にしても矢倉戦法のように固めた状態で引くわけではないので攻撃力がある代わりに防御面はイマイチで、一歩間違えると一気に敗勢になるような変化もありました。


参考までに本書の局面図を一部引用します。
(本書P17 NO.8の問題図から引用)

f:id:gerren:20181122182104p:plain

後手が△7四歩と指した局面です。
先手側としては7五の銀に敵の歩が当たっており、▲6六銀や▲8六銀と躱す手がまず思い付きます。
一方で銀を無視して▲2四歩と攻めに転じる手や▲4六角のような手も見え隠れします。

ただ選択肢が多いのは後手側も同じで、△8六歩▲同歩△同銀のような手や△7六銀▲同歩△9九角成のような攻め筋が常にあり、機を見てそれを狙ってきます。


終始こういった不安定な感じで、タイミングや選択肢を間違うと一気に崩壊するので、正直かなり指してて恐い戦法といった印象でした。
(あくまでも個人の感想ですが、玄人向けの作戦な気がします。下手打つと相手の棒銀食らって死にます)

慎重に駒組みを進める必要があるので、持ち時間の極端に短い将棋で採用するのは慣れない内は難しいかもしれません。

ただ一方で、普段の相掛かりの流れにマンネリを感じてる人は指してみると面白いでしょう。
本戦法を知らない人も多いと思うので、こちらの狙いに気付かず一方的に攻めきることもできるかもしれません。
相手の出方によっては中飛車に振って5筋から攻めたり、基本居玉で戦うことが多いですが右玉に構え直したり色々柔軟に指せるところも魅力です。

問題数が全39問と少なくサラッと読めるにも拘わらず、本戦法の基本的な狙いも分かりやすく説明されていて、その点も素晴らしかったです。


終わりに

色々書きましたが、相掛かりってどう転んでも結局は難しい感じがします。
正直私は苦手です。

以前『よくわかる相掛かり』という本で少し相掛かりを勉強しましたが、相掛かりは相手と呼吸が合わないと実現しない戦型であることに加え、飛車先の歩を交換した後どこに飛車を引くかでもガラッと戦い方が変わりますし、そもそも飛車先の歩を交換しない相掛かり早繰り銀のような変化もあるので、一通り抑えるだけでも大変です。

なら楽に学べる戦法があるのかといったら、思い付かないですけど。

ただ定跡の勉強をするにしても、それが苦痛になったら趣味として将棋をしている意味がなくなるので、気分が乗ったときだけ定跡書を開くようにしています。

極限早繰り銀や飯島流引き角戦法についても、自分なりに形になったらいつかレビューしてみたいですね。