『全戦法対応 将棋・基本定跡ガイド』レビュー
先日東京を訪問した際にアカシヤ書店にて購入した本です。
さっそく読んでみたので感想を書きたいと思います。
- 作者: 長岡裕也
- 出版社/メーカー: マイナビ出版
- 発売日: 2017/12/26
- メディア: 文庫
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本書の概要
2017年末に発売された長岡裕也先生による定跡本です。
前書きやキャッチコピーに、「将棋のルールは覚えたけれど、どうやって進めていけばいいかわからない方」「初・中級者の方」を対象にした本であると書かれています。
結論を先に述べさせてもらえば、キャッチコピーに噓・偽りなし!!でした。
長岡先生は他の著書に定跡本が多数あり、特に『ひと目の~』と題したひと目シリーズは一問一答形式で定跡を学べるようになっているので、級位者でも読みやすく個人的にオススメです。
- 作者: 長岡裕也
- 出版社/メーカー: マイナビ出版
- 発売日: 2016/01/14
- メディア: 文庫
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- 作者: 長岡裕也
- 出版社/メーカー: マイナビ
- 発売日: 2014/07/25
- メディア: 文庫
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- 作者: 長岡裕也
- 出版社/メーカー: マイナビ出版
- 発売日: 2015/02/24
- メディア: Kindle版
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- 作者: 長岡裕也
- 出版社/メーカー: マイナビ出版
- 発売日: 2014/02/26
- メディア: Kindle版
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これらと同じ次の一手タイプの定跡本ということで、興味があり購入してみた次第です。
本書は居飛車・振り飛車問わず様々な戦型を広く浅く網羅しており、『羽生善治の定跡の教科書』に似たスタンスの本ですね。
なお本書では以下の基本定跡を扱っています。
◎居飛車 :矢倉、角換わり、横歩取り、相掛かり
◎振り飛車:四間飛車、石田流三間飛車、中飛車、角交換四間飛車、相振り飛車
本書の特徴
本書の特徴とも言えるべき点は以下のとおり。
・一問一答(次の一手)形式
・各章の始めに目指すべき駒組みを掲載
・全ての戦法を初手から解説している
・一手につき1ページの解説
・動かす駒を色付きで表示
・ヒントあり
一般的な次の一手本は、ヒントはあれど動かす駒を明示することはありません。
例えば、歩に色が付いていた場合、それが答えになってしまうからですね。
(↑本書の第1問から引用)
正直読み始めた時の私の感想は、
「簡単すぎやん!」
「幾ら何でもヒントばらまきすぎやろ」
でした。
実際、動かす駒が明示されていることやヒント、また内容が簡単なことも影響して、拍子抜けするほど容易に最初の章(矢倉)を読み終えてしまいました。(解説もしっかり読んだ上で)
ただ全て読破して、この構成にはメリットがたくさんあると思い直しました。
私が読んで感じたGOODポイント
序盤の基本の駒組みがあいまいな初心者~中級者の方も、駒をどこに動かすかだけ考えれば良いので、挫折せず読み進めることができると思います。
本書は一般的な次の一手本とは違い、正解手を悩んで出して一喜一憂する感じではありません。
どちらかというと正解させてあげよう、という雰囲気が見てとれます。
(例えば「桂馬」に色が付いていれば、2通りのどちらかは正解なわけです)
ヒントや明示された動かす駒を材料に著者の意図を予想して、
「ここかな?」
「あれ?違った!」
「あーそういう意味があるのか」
「この手も間違いじゃないんだね」
といった感じで良い意味で「適当に」読み進めていけます。
正直、入門書は「初心者でも苦痛なく読めるか」が非常に大事で、疲れて読めなくなってしまう本は意味がありません。
その点では、『羽生善治の定跡の教科書』よりも優れていると思います。
(本書は、初心者が読むのに盤駒を必ずしも必要としない点もメリット)
初心者は迷わずこれを買っておけば、間違いはないでしょう。
また、駒に色が付いている点は、復習する時に強い力を発揮します。
フラッシュリーディングを容易にするからです。
速読して何度も読み直すことにより、自然と手が伸びるようになる効果が期待できます。
私が読んで感じたBAD(?)ポイント
タイトルには基本定跡ガイドとありますが、どちらかというと「基本の駒組みを覚えよう!」って感じの本です。
例えば四間飛車を例にとると、
「四間飛車の基本の駒組みが完成したよ♪」で終わってしまっています。
その先の「これからどう戦うか」という観点については全くと言って良いほど触れてないです。
ただこの点に関してはキャッチコピーが「将棋のルールを覚えたあと、次のステップに進みたいという人に」ということなので、本に非はありません。
とはいえ将棋を続けると、「序盤の駒組みは分かったけど、何を狙って攻めていけばよいのか分からない」という更に次のステップの悩みが生じます。
それについては、他の定跡本等で補っていくことになるでしょう。
本書はあくまでも土台作りと思って活用しましょう。
それらを踏まえた上で対象棋力を考えると、
◎初心者~ウォーズ3級:読んで損なし!!
◎ウォーズ2級 :得意戦法以外なら得られるものが有るハズ
◎ウォーズ1級 :穴を埋める用途には使えるかも?
といった感じになると思います。
正直ウォーズ2級以上はコスパや学習効率が悪くなってくる感じがするので、人を選ぶ本だと思いますが、居飛車・振り飛車まんべんなく基本の駒組みを抑えておくことはやはり重要です。
他の定跡本等で一通り勉強したことがない人は読んでみても良いかと思います。