苦しんで強くなる将棋ブログ

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才能皆無だが、試行錯誤して棋力向上を目指す。日常ネタもたまに…

『極限早繰り銀戦法(2017年度将棋世界8月号付録)』レビュー

個人的に最近極限早繰り銀に興味を持ち、現在勉強中です。
今更!?って人もいると思うんですけど、自分ブームに乗るのが下手なんですよ……

本屋で極限早繰り銀の本を見つけ興味を持ったものの、結構変化も膨大で難しそうだな、というのが第一印象。
一応マイナビには難易度表記があって、この本も初級〜中級者向けということらしいですが、この表記は私個人の感想ですが経験的にあてになりません。^^;サーセン

そこで、少し前の将棋世界の付録に同著者の極限早繰り銀をテーマにしているものがあったことを思い出し、とりあえずそっちを読んでみることにしたわけです。

中々読みやすかったので、ウォーズで級位者、24で初級タブぐらいの人にオススメです。



本の概要

佐藤慎一五段が極限早繰り銀戦法について次の一手形式で解説した本です。
全39問で、第29問以降は佐藤五段自身の実戦譜からの出題になっています。

初手からの進行になっているのが、個人的にはありがたかったです。


この本で学べた事

極限早繰り銀の基本の狙いと理想手順を勉強した後、後手側の対応の変化に合わせた手順をそれぞれ学べます。

極限早繰り銀は右銀をうまく五段目に進出させいかに位を取るかが重要なようです。
特に早い段階で銀が五段目に進出した形は、極限早繰り銀の理想図だそうです。


↓極限早繰り銀の理想図の一例
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また極限早繰り銀側の先手は、右銀を進出させていく過程で37の地点が必然的に空くので、各交換した場合55や64の地点からの角の打ち込みによって飛車が狙われることを常に念頭に置かなければならない印象です。

後手側はそのあたりを考慮し、8筋に飛車を展開する等して先手の銀を活用させないよう妨害したり、色々と手を打つんですね。

まあ級位者程度の実力しかない私は、この本を読んで極限早繰り銀という戦法の着眼はそのあたりかな?と勝手に結論付けましたが、私の棋力が足りない点に加え本自体のボリュームも少ないので、たぶん全然理解できてないです。(^_^;)


少し疑問に思った事

極限早繰り銀の初手からの進行は、
▲26歩△34歩▲25歩△33角▲76歩、と進行していきます。
この後定跡手順では△22銀となっているんですが、この手は「角換わり上等じゃい!」という手であって、相手が振り飛車党の場合や居飛車党でも角換わりを好まない人達は△44歩と角道を閉じてくる場合が多いです。

というか勉強し始めてから私自身ネット将棋で50局は指しましたが、△22銀と指す人は1人しかいませんでした。(-_-;)
私が後手だったら、迷わず△22銀なのに……。

角道閉じられると極限早繰り銀は封じられるので、そこから別の将棋を目指していくしかないんですよね。
それに近い変化が載っている本ってどういった定跡本になるんだろう。棒銀とかかな。


終わりに

この本はボリュームが少ないのに加え次の一手形式なので読みやすく、極限早繰り銀の概要を手早く知りたいという人にはピッタリだと思います。

極限早繰り銀という戦法に触れる中で、相掛かりや横歩取りチックな駒の指し回しが若干出てきました。
色んな戦法はあれど、勉強したことはどこかで繋がっていると今回実感しました。

次のステップとして、マイナビの『史上最強の攻撃戦法 極限早繰り銀』を少しずつ読んでいく予定です。


『詰将棋の国の王女様』レビュー

Google Playにて非常に評価が高かったので、実際にプレイしてみたところ、中々楽しめたので紹介します。 

2014年から、はっぽう様が提供されている無料アプリ『詰将棋の国の王女様』です。
初心者や詰将棋が苦手な人向け。



詰将棋の国の王女様

詰将棋の国の王女様

はっぽうposted withアプリーチ



本アプリの概要

以下、Google Playの作品詳細欄からの引用です。

詰将棋の国の王女様は魔王によって動物にされてしまいました。
王女にかけられた魔法を解くには詰将棋を50問解かなければいけません。
さぁ、妖精の助けも借りて一緒に冒険の旅に出かけましょう!

用意された詰将棋は50問。

最初は頭金の1手詰から始まり、徐々にレベルアップしていきます。
手数は1手詰〜7手詰まで。
7手詰は簡単なものばかりですが、5手詰は結構歯応えがあるものもあります。

前半は簡単な問題ばかりですが、メイドさんゾーンの34問目あたりから少しずつ難しくなってくる印象です。
(何を言ってるのか分からないと思いますが^^;)

↓この辺ですね
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またヒント閲覧機能があり、ヒントと書かれたボタンをタップするとヒントが表示されます。
(普段は隠れています)



良かった点

①問題を解くとストーリーが進んでいくのですが、これが中々良いスパイスになっていて楽しく解くことができました。
初代ドラクエをプレイしている人には、クスッとなるネタもありましたね。

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りゅうおう様よりケチだけどな。


詰将棋の内容に関して言えば、全体的に有名な詰手筋の問題が多かった印象です。
5問一組でテーマが大まかに決めてあり、後ろの問題が前問の応用問題になっているケースも多く、その点も高評価。


③クリア後は任意の問題を解き直すことが可能。


④この詰将棋アプリが他と大きく違う点として挙げられるのは、『詰将棋パラダイス』のアプリのように、1手でも本筋と違えば即失敗ではなく、5手詰であれば5手駒が動いて初めて失敗の判定が出る点です。
この点は、考えようによってはシビアです。
(人によっては、クリアできずハマる)
ただ、適当に指して初手を導き出したりといった悪癖を防ぐメリットが大きいと判断し、今回は良い点とさせていただきました。



惜しい点

①各問題をクリアした後に、解説がないのが残念……。
一般的にどの詰将棋の本にも解説は多かれ少なかれ存在するので、やはり本作品でもあると良かったと思います。


②操作性の面で駒をタップしてから反応するまでに若干タイムラグがあり、爽快感がイマイチ。
(私のスマホがショボい可能性もある)


③2周目で問題を解き直す度に、毎回ストーリーが挟まれるのが少しストレス。スキップ機能があれば文句なしでした。


④各駒の動きや、詰将棋の最低限のルール(無駄な合駒の禁止等)には触れずに本編がスタートします。
その辺が分からない人は、何か他のサイト等で勉強してから臨みましょう。
 

 

終わりに

詰将棋というか、将棋関連の本やアプリって堅苦しい物が多いと思うんですよね。

最近は『3月のライオン』や『りゅうおうのおしごと!』等漫画やライトノベル作品の後押しもあり、大分オッサン臭いイメージが払拭されつつあるように思えますが、まだまだ初心者にとって敷居が高いゲームだと感じます。

こういった作品がどんどんと増えると個人的に嬉しいです。



追記
私がプレイしたのは、バージョン1.1です。
総プレイ時間は測ってなかったんですが、体感的には1時間も掛からなかったと思います。
気楽にできるゲームなので、是非!

【日常】福岡マラソン2018当選しました

最近少し個人的な理由で忙しく将棋に時間を使えてないため、前回の記事から将棋関連の記事は更新できない状態が続きますが、お許しください。

ブログ自体は負担にならない程度に、ユルユルと続けていきたいと思いますので、もし見ていただいている方がいらっしゃいましたら
、忘れた頃にたまに覗いていただけたら幸いです。



ところで実はタイトルにも書きましたが、申し込んでいた福岡マラソン2018に抽選の結果当選しました。
せっかくなので将棋とは関係ないですが、軽く福岡マラソンの紹介をするとともに、普段運動しない人に向けて運動に興味を持ってもらえるような記事を書いてみたいと思います。



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福岡マラソンの概要

福岡マラソンは、参加者が一万人を超える比較的大きな市民マラソンです。
参加人数の多い市民マラソンは人口が多い地域で基本開催されるので、沖縄以外だと大阪以東に集中する傾向にあります。
ただ、九州一帯で参加しやすい市民マラソンの中では、現状一番大きな大会のようです。

福岡市の天神あたりから走り始め、街や海を眺めながら糸島まで走るコースになっています。

フルマラソン以外に、車椅子競技の部と、距離の短いファンランの部があります。



抽選倍率など

大規模な市民マラソンでは、申し込み順に定員を超えたら切るのではなく、事前に申し込んだ上で抽選で参加者を決定するタイプのものが多いです。

要するに、大会に参加するには純粋に運が必要です。
実力があっても、悲しいことに抽選で落選すれば出られません。

どうせ当たらないだろうと軽い気持ちで春に申し込んだのですが、6月29日の抽選発表を確認したところ、まさかの当選…。
定員12000人で一般枠が9000人弱あるのですが、自分はそこに運良く引っかかったようです。

今年はマラソンの部は、倍率3.84倍でした。
(これでも例年に比べれば、倍率は下がった方みたいです)
ラッキーでした。



参加理由

持久力を主体とした身体づくりのための動機が欲しかったからです。
目標になればマラソンでなくとも、例えばトライアスロン等でもOKでした。
(バイク持ってないけど^^;)

正直私は別にマラソン信者ではないので、軽装での長距離に特化した身体作りをする気はないのですが、持久力養成の目標として市民マラソンを活用するのは有りだと思います。

とはいえ、参加人数が一万人を超えるような大会には出たことがないので、今からワクワクしています。

走行中の給食も色々あるみたいです。全種類食べるぞ〜!!(無謀)



身体を動かすことの重要性

私自身は運動は大の苦手で、子ども時代は小中高とまともに運動をしてこなかったモヤシ野郎なのですが、色々あり最近は定期的に身体を動かすようにはしています。


個人的にですが…

トレーニングが長期間できず肉体が弱ってくると、ややネガティブな考えが多くなります。
逆に肉体が強くなると、自信がつき物事に動じなくなり、頭も回る気がします。

誤解を恐れず言うならば、「強い精神は強い肉体に宿る」は真理だと思います。

仕事等にも多少なりとも良い影響がありますね。



目標タイムなど

短時間をある程度の速度で走るのには慣れているので、インターバル走に加えて、20〜30kmの距離を走るメニューをちょこちょこ取り入れて行きたいと思います。

スタート時は身体が軽いですし気分もハイになってるので、本番で普段通りに走ると結果的に飛ばしすぎちゃうんですよね。
事前に予行で走ってない場合、大体30km程度で足が急に動かなくなる人が多いです。

本番までに我慢して走ることを身体に染み込ませていきます。

最低目標は4時間、できれば3時間半以内でのゴールを目指します。



普段運動をしない人へ。〜ランニング(マラソン)のススメ〜

運動にも色々あるんですが、絞るならば個人的には全身運動で持久力向上に繋がるものをオススメします。

・ランニング
・水泳
・登山

などが特にオススメです。
ただ、水泳はプールが近くにない場合運動を継続しにくいですし、登山は天候の影響を受けやすい部分があります。

よって、手軽さという面ではランニングが一番オススメです。
最初はウォーキングでも大丈夫ですよ。

運動は継続することが大事です。
そしてそのためには怪我をしないことが一番重要です。
無理をせず、運動が嫌にならない程度の負荷で続けてみてください。

新しい自分を発見できると思いますよ。

『解いてスッキリ!3手5手の詰将棋』レビュー

またしても詰将棋本を紹介します。
詰将棋を解くのが最近は習慣化してきたので、一定ペースで今後もレビューしていくことになるかと思います。



2015年に発売された、本間博先生の詰将棋本です。
詰将棋を初級者にいかに楽しんでもらうか、という著者の気持ちと工夫が詰まった一冊です。



本書の構成

まず、目次を本書から引用すると、以下のようになっています。

序 章 詰将棋上達のコツ
第1章 解いてスッキリ!3手詰partⅠ
第2章 解いてスッキリ!3手詰partⅡ
第3章 解いてスッキリ!5手詰partⅠ
第4章 解いてスッキリ!5手詰partⅡ
第5章 解いてスッキリ!7手詰
コラム① 古典名作の世界1
コラム② 古典名作の世界2
コラム③ 古典名作の世界3
コラム④ 古典名作の世界4
コラム⑤ 古典名作の世界5
コラム⑥ 古典名作の世界6


3手詰が各パート50問の計100問。
5手詰が各パート35問の計70問。
7手詰が計10問。

3手と5手がメインで、7手は挑戦問題という位置付けだそうです。

ヒントあり。


また、この本の最たる特徴ですが、以下のルールに従って作られています。

配置駒5枚以内
持ち駒は2枚以内
・打ち歩詰め打開手筋の2題を除いて全てが手筋の捨て駒を含む

持ち駒の少ない簡単そうな問題図にして解く意欲を煽ったり、詰め将棋を解く上で不可欠な捨て駒の手筋を身につけさせるための問題構成から、初級者に役立ってもらいたいという本間先生の熱意が垣間見えます。

実際、まえがきにもその旨が書いてあり、
詰将棋の面白さを広く知っていただくための易しい問題集」とのことです。



実際読んでみた感想

3手詰と5手詰は少しずつ並行して解いて、最後に7手詰を一気に消化しました。
3手詰と5手詰はパート1とパート2がありますが、パート1が易しく、2が難しい印象。
後半の5手詰は結構手応えがありました。
7手は手数が伸びた分だけ難易度が上がっているといった感じで、私レベルでも解けないほどではなかったです。

配置駒が少ないから必ずしも簡単というわけではないことは重々承知していますが、パート1の3手詰は非常に簡単な問題が多かったので、『1・3・5手実戦型詰将棋』を超える簡単な詰将棋集を期待してしまいました。

結果、全体として予想(期待)よりは難しかったです(^_^;)
簡単な問題と難しい問題が入り混じってる感じなので、連続で解けない問題に直面することはなく、そういう意味ではバランスが良いかもしれません。



特に良いポイント1(解きながら復習できる構成)

本書の良い点として、ある詰め手筋の問題を解いた後、引き続き同じ手筋で解く問題が故意に連立させてある箇所がチラホラ見受けられる点が挙げられます。

解いていく中で、自然と復習できるようになっているのです。

例えば、私は打ち歩詰めの問題(第167問)が解けず、降参して答えを見ました。
解答は不成を用いて玉の逃げ場所を作る手筋で、解説にも「打ち不詰めには不成」という手筋があると書いてあり、なるほどと思いました。

そして次のページをめくって問題に読みを入れると、打ち歩詰めが生じる変化があるんですね。
早速「打ち歩詰めには不成だったな」と、不成で考えて見るとアッサリ詰みました。

私は打ち歩詰め打開の手筋として、これを学んだだけでも本書を読んだ価値がありました。

人それぞれ何かしら発見があるかと思います。



特に良いポイント2(コラム)

普通の詰将棋本は、まえがき以外はひたすら問題と解説が羅列してるだけの構成なんですが、この本は途中にコラムがあります。

古典詰将棋の紹介なんですが、これがなかなか面白くて、良い頭休めになりました。
詰将棋の面白さというのは、こういう作品に触れなければ知ることはできませんね。
(知ってる問題もありましたが)


せっかくなんで1問紹介します。


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エレベーター詰と言われる有名な古典詰将棋だそうで、堀半七作だそうです。
一見簡単そうだが、なかなか詰まない。

手数は19手ですが、図面がシンプルなので十分頭の中で試行錯誤できます。

あえて答えは書かないので、どうしても解けない方は「エレベーター詰」でググってみてください。



実際解いた結果

私が実際に解いた結果は以下の通りでした。
今回は思考時間を一問10分までと決めて解いてみました。


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10分で解けずギブアップした問題が、
5手詰:第107問、第120問、第138問、第150問、第167問
7手詰:第179問
でした。

以前解いた『3手詰ハンドブック』が平均タイム41秒、『5手詰将棋:テーマは「実戦! 」 (将棋パワーアップシリーズ)』が2分14秒だったので、全体としてみれば、比較的簡単な3手詰、5手詰集と言えそうです。
7手は『3・5・7手実戦型詰将棋-基本手筋をマスターし、級から段へ (池田書店 将棋シリーズ)』の7手詰と同じくらいの難易度でした。

5手詰以下の難易度で比較するなら、
1・3・5手実戦型詰将棋<本書<○手詰将棋シリーズ<ハンドブックシリーズ

という感じになりそうです。
(高橋先生の3手詰将棋は未読ですが)

内容としては『1・3・5手実戦型詰将棋』の方が簡単ですが、たまにややトリッキーな問題もあるので、解けた時の爽快感は全体としてこちらが勝ります。


ただ、初心者が最初の問題集として使う場合、使い方を工夫する必要がありそうです。

全部読破を目標とせず、詰将棋上達のコツの部分と3手詰のパート1をまずは反復する、という使い方であれば将来的に5手詰や7手詰にもチャレンジできるし良い教材なのではないかと思います。



終わりに

思ったよりは手応えがありましたが、コンセプト通りの良い本だと思います。

何より、途中のコラムの古典名作が面白かったです。
多分知ってる人は何処かで見たような問題なのでしょうが、知らない身としては新鮮でした。


現在私は、詰将棋に関してはとりあえず色んな問題を解きまくっていますが、同じ本を反復するという方法も有効だと耳にします。

あくまでも棋力向上のためにやっているので、近々反復方式も取り入れようかと思っています。
メリットとデメリットは考えれば予測がつきますが、今はメリットの方が大きそうです。

浦野先生のハンドブックシリーズか高橋先生の○手詰将棋シリーズがヒントがないので、反復するには良さそうですね。

『1・3・5手実戦型詰将棋』レビュー

前回に引き続き、詰将棋本のレビューです。



1・3・5手実戦型詰将棋

1・3・5手実戦型詰将棋



本書の構成

2015年出版の飯野健二先生の詰将棋本です。

いわゆる実戦型の問題集で、パズル的要素はなし。
1手詰80問、3手詰84問、5手詰110問で構成されています。
ヒントあり。(ページ左端なので隠しやすい)


まえがきでも触れられていますが、あえて詰将棋としての作品性を出すことを抑えた上で、実際に頻発する詰め手筋(頭金など)がたくさん盛り込まれています。

要するに、一般的な詰将棋作品集としてではなく、詰将棋ドリルとして作られた本です。


故に、なかには持ち駒の金をベタベタと打ってオシマイ、なんて問題もありますが、案外そういう問題が載ってる詰将棋本が少ないんですよ。
そして、そういう問題を必要としている人は必ずいます。


例えば、初心者は頭金で詰むことが感覚的に理解できないです。
一度誰かに指摘されたり本で概念を知ることができれば次からは瞬間的に対応できますが、最初は難しいものです。
無から有を生み出すのに近い…。

少なくとも私は初心者の頃駒の動きは完璧でしたが、頭金で詰む局面で敵玉に狙いをつけてなお熟考しなければ指せませんでした。
覚えたら一発なんですけどね。



実際解いてみた感想

普段は先頭から順番に解いていくんですが、今回は3手詰と5手詰を並行して解いていきました。

最後に残った一手詰80問を一気に。


飯野先生の本は、同じドリル系統の本である浦野先生のハンドブックシリーズや高橋先生の○手詰将棋シリーズと比較して、妙手や鬼手と感じる手が良い意味で少ないように感じます。
特に本書はその傾向が顕著です。

また、同じ詰め手筋の問題が繰り返し出てくるのが目に付きました。
それをどうとるかですが、個人的にはその点は復習にもなるし、頭休めにもなって悪い印象はありませんでした。


肝心な本書の難易度ですが、ハッキリ言ってかなり低いです。
というより、手数が同じものと比較すれば、私が今まで解いてきた詰将棋本の中で、圧倒的に一番簡単でした。


3・5・7手実戦型詰将棋-基本手筋をマスターし、級から段へ (池田書店 将棋シリーズ)』も解きましたが、こちらは3手詰や5手詰が浦野先生のハンドブックシリーズと比較して難易度はさほど変わらなかったように思います。
7手詰が次々と解けて嬉しかったので思い出が美化されていますが、5手詰で結構苦戦した覚えがあります。

わざわざ、1・3・5手と3・5・7手で本を分けた理由が何か疑問でしたが、同じ手数でも難易度が全然違うんですね。



今回解いた結果

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以前レビューした『3手詰ハンドブック』の平均タイムが41秒、『5手詰将棋:テーマは「実戦! 」 (将棋パワーアップシリーズ)』が2分14秒であったことを考えると、本書の難易度の易しさが窺えると思います。
(『5手詰将棋』のレビューでおそらくかなり簡単な5手詰本だと書きましたが、本書には完璧負けます)

しかも本書は完全に初見です。

とはいえ、この程度の難易度なら平均して一手詰なら1秒、3手詰なら10秒、5手詰なら30秒程度で解けるようになりたいものです。



最後に

簡単な詰将棋本って実は結構貴重な気がします。

難しすぎる詰将棋本は持ってても意味がない場合がありますが、逆の場合は高速で解いて脳を起こすのに使ったり、対局の前の調子付けに使ったり、用途はいくらでもあるからです。


本書は、『5手詰ハンドブック』や『5手詰将棋:テーマは「実戦! 」 (将棋パワーアップシリーズ)』、『3手詰ハンドブック』が難しい人に、また初心者以上で初めて詰将棋本を買う人の初めの一冊としてオススメです。

とにかく簡単な詰将棋から始めたい人は、これを選んでおけば間違いないと思います。

『5手詰将棋』レビュー

この一ヶ月の間ちょくちょく取り組んでいた詰将棋本が解き終わりましたので書評を書いてみたいと思います。

昔少し本書に取り組んだ事がありましたが、全て通した経験がなかったので、今回全問解き直してみました。



5手詰将棋:テーマは「実戦! 」 (将棋パワーアップシリーズ)

5手詰将棋:テーマは「実戦! 」 (将棋パワーアップシリーズ)


本書の構成

2009年に出版された高橋道雄九段の詰将棋集です。
実戦型ばかりの5手詰を202題収録しています。

本書は実戦型ということもありパズル的要素はほとんどないので、5手としては難易度も低く、5手詰入門書として薦める人も多いです。
段位者の方は実戦前のウォーミングアップに活用されるという話も聞きますし、言わずと知れた名著です。



実際解いてみた感想

実戦型が多いので、「読みのトレーニングだけでなく詰み形を学ぶ訓練にもなり、一石二鳥な本」というのが率直な感想です。

囲いを本当に崩した後のような問題図が多く、実戦型を売りにした詰将棋としては完成度がかなり高いと思います。


ただし、パズル的詰将棋によくある、

「いや待てよ……、あ、まさか…………うわあああァァァ詰んだァァァァァ超気持ちいいいいィィィィィィィ───────( ゚д゚)脳汁ドパドパ」

みたいな効果はあまり望めません。


実戦型なので、見るからに難しそうで解く気が失せるような問題はなく、実際に私はそこまでストレスを感じることなく読み進めることができました。

ただ、私レベルの棋力では簡単すぎるということはなく、全体的には結構な手応えを感じました。



今回解いた結果

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以前レビューした『爽快!3手詰トレーニング200 (マイナビ将棋文庫)』が解答時間が平均2分13秒でほぼ同タイムだったのですが、正解率が圧倒的に『5手詰将棋』の方が高いです。
ギブアップした問題も本書は第76問と第163問の2問だけでした。

また、タイム計測はしていませんが、半年ほど前に解いた『5手詰ハンドブック〈2〉』よりも明らかに簡単でした。
爽快!3手詰トレーニング200 (マイナビ将棋文庫)』が比較的難しい3手詰本というのを抜きにしても、本書はかなり簡単な5手詰本だと言えそうです。


少なくとも本書をサラサラ解けるようにならなければ、5手詰卒業は語れないでしょう。


※2018/5/22追記
本書はかなり簡単な5手詰本と書きましたが、より楽に解ける本を見つけました。
本書が難しくて嫌になってしまう人はコチラを。

gerren.hatenablog.com



余詰めの存在

解いていく中で、1問余詰め(出題ミス)を発見しました。

第165問です。

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解答は
「▲3ニ銀△同金▲4三龍△同金▲3ニ金まで」
となっていますが、

「▲5ニ銀△同歩▲3ニ金△5一玉▲4ニ金△6一玉▲6ニ金まで」
でも詰みます。駒もピッタリです。

因みに、変化として
6手目「△同角ならば以下▲5ニ桂成まで(駒余り)」
4手目「△同金ならば以下▲5ニ龍△3一玉▲3ニ龍まで(駒余り)」
2手目「△3一玉ならば以下▲4ニ龍△同玉(△同角は▲3ニ金まで)▲4三金△3一玉▲3ニ金まで(駒余り)」
2手目「△同金ならば以下▲3ニ金まで」


いずれにしても詰みます。
何度も検討したのでおそらく間違っていないかと。




因みに他にも余詰めがある問題があるのかなと少し調べたら、以下のブログ様でも一問余詰めのある問題を発見されていました。

http://rikeda.hatenablog.com/entry/2014/09/03/122330

第171問です。

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解答は
「▲31角打△3三玉▲3ニ飛△同玉▲4ニ角上成まで」
となっていますが、

「▲31角打△3三玉▲4ニ角引成△2ニ玉▲3ニ飛△1三玉▲3五角成△2四香▲3一馬まで」
でも詰むそうです。
解いてる最中は気づきませんでしたが、確かに詰みますね。



他にもあるかもしれません。
探してみるのも楽しそうです。

本来は余詰めは、現代の詰将棋のルールでは出題ミスなので詰将棋の作品としては認められません。
ただ、本書に限っては「実際に遭遇しうる囲いを崩したような形」に近づけるためにあえて高橋先生がそのまま載せた可能性が高いように思えます。

手数が明示されていれば、解く分には問題ないので。



最後に。5手詰本初挑戦に本書を検討している方へ。

3手詰からステップアップする際に選択する本として、確かに候補に上がるくらい素晴らしい本だと思います。
難易度もマイルドです。

ただ、始めて5手詰本に取り組むのは時間もエネルギーもかなり必要だということを念頭に置いて挑戦してください。
本書も同様です。

5手詰としては簡単とはいえ、3手詰と5手詰は一般的に難易度にかなり開きがあるように思います。
最初はみんな苦しいですし、最初の数問で何度も考え込んでしまうと嫌になってくるかもしれません。

でもはじめは解けなくて普通ですから大丈夫。
気にせず、答えを見て進めていきましょう。

とりあえず耐えて一冊仕上げてください。
始める前よりかなり見えるようになってるハズですから。

『史上初の詰飛車問題集』レビュー

本書を本屋で見かけ、飛車詰め問題集ってのは新しいなーと少し感心しました。

買って読んでみたのでレビューしてみたいと思います。


史上初の詰飛車問題集

史上初の詰飛車問題集

【対象棋力:初心者〜ウォーズ5級】


キャッチコピーなど

以下Amazonの内容紹介からの引用です。

内容紹介

史上初の詰飛車問題集。 
今まであるようでなかったテーマの将棋本です。
つるの剛士さん推薦、森下卓九段の解説文つき。

素人が簡単に勝てるための必携書です。 

藤井聡太六段からの将棋ブームで将棋に興味を持った人や、 
何年・何十年ぶりに将棋を指そうと思った人、 
「将棋ウォーズ」などのアプリで将棋にハマってしまった人などにうってつけ。 

素人が簡単に勝つためのキーワードはもちろん飛車です。 
詰飛車に特化した全80問を収録しています。 

(はじめにより) 
「ひょっとして、素人の将棋なんて飛車をとってしまえば勝ちじゃねぇの?」 
私の心にわき上がってきたそんな素朴な疑問を、
長年の友人でありまぎれもないプロ棋士である日本将棋連盟の石田直裕五段にぶつけてみた。 
「そうですよ。というより、プロ同士の対局でも飛車をとられたらだいたい終わりですよ」 
石田五段は、そう断言した。 



この本のキャッチコピーは、下記です。

ヘボ将棋は飛車を取るだけで勝てる。“最強の素人”を約束する一冊。



2018年3月に発売された本で、石田直裕五段が問題製作に携わっているそうです。
素人(初心者)をターゲットとした本のようですね。



この本の有用性を図る上でのポイントは、

①一般的な王を詰ます詰将棋よりも、初心者にとって有用か
②この本を読むことで到達できる“最強の素人”はどの程度か
(同じ初心者相手に勝ちやすくなるか)

という点でしょう。



本書の構成

問題は全80問で、コラムを挟んで前半30問が1手詰、後半50問が1手〜3手詰です。

詰飛車問題集なので、最低でも捨て駒は銀一枚程度に抑えつつ、相手の飛車を詰まして駒得を狙う問題がズラリ。

また、基本的に部分図の問題ですが、最後の5問だけは全ての駒を動員した局面図での問題になっています。

悪い点を挙げるなら、ヒントが各問題にデカデカと書いている点です。
それ答えだろってヒントが多いですが、初心者向けの本だから助かる人も多いのかな?



実際に解いてみた感想

難易度は一般的な入門用の一手詰問題集とほぼ同じかやや低いくらいです。

3手詰も難易度はほとんど変わりません。
手応えのある問題を期待してた人は、買うと拍子抜けしますので注意。

王を詰ますのと比較して感覚が違うのかな?とそこに興味がありましたが、あまり変わらず一般的な詰将棋を解いている感覚。
唯一明確に違うのは、王手を利用して飛車を素抜く手筋が出てくるところかな…



それで、初心者にとって、詰飛車問題が有用かどうかなんですけど…

結論は微妙かな、と思います。
(あくまで個人の意見です。)


正直なところ、これだったら普通の一手詰問題集でいいかなーという感じ。

普通に一般的な一手詰を解いていれば、この程度なら同じ感覚で気付けるようになる気がします。

1手詰将棋と同じく駒の利きを理解する訓練にはなると思いますが、わざわざ飛車でやるメリットがないっていうか…


“飛車を取れれば、素人将棋は勝ち!”ってのが概ね正しいのは賛成ですが、決まるのは大概「相手がウッカリしていた」場合に限るんですよね。
王手飛車とかまさにそう。

要するに、「素人はミスをするから、相手のミスを咎めて勝とう」ってのが出発点の本だと思うのですが、飛車を狙うだけだと相手のウッカリに期待するしかないので安定して勝てません。

また、初心者がこの本を読むと、相手が王手飛車を見逃すことを期待するような指し方をするようになりそうで、少し心配です。
子どもなら尚更ですね。



とは言え…

現実問題として初心者〜低級の将棋で、例えば王手飛車を「かける側もかけられる側も」ウッカリ見逃したってのは実際結構見かけるので、(特に角を使った王手飛車)この本だけではまず勝てないと決めつけるのも早計かもしれません。

ただ、それも対局で食らったりしていくうちに、自然と学習しますので…(^_^;)
少なくとも気持ちの上では、ね。

この本をわざわざ使う必要はないと思います。


本書のみで勝つとするならば、前提として
「相手が駒の動きしか分からない完全な初心者」
ってのが最低条件な気がします。



因みに、私は前書きやコラムもジックリ読んで30分くらいで読了しました。
1手詰が楽に解ければ、この本は物足りないと感じると思います。

象棋力はあくまでも初心者です。



本書が有用な人

本書をお薦めする人がいるならば、楽に勝ちたいって人よりも、
「いつも王手飛車を決められて負けてしまう」
って人かな。
詰飛車問題を解くことにより、結果的に王手飛車のラインに目がいくようになって、ミスが減る効果はあるかもしれない。


逆に、職場のアイツに手っ取り早く勝ちたい!!って理由でこの本を手に取るのは、間違いです。

正直“素人”相手に馬鹿勝ちしたいなら、「原始棒銀」を覚えた方が早いですし確実です(^_^;)
受け方を知ってるなら、相手はもはや素人ではないしね。



個人的に勉強になった問題

全体的に批判っぽくなりましたが、実はなるほどと思った手筋もありました。
本書の第75問、3手一組の問題です。

詰飛車問題という点がヒントになっているため少し考えれば分かるのですが、他にも有用そうな手は多く見える局面なので、実際の対局ではつい他の手を指してしまうような気がします。

著作権的に問題図だけなら掲載してもOKなのか、それでも駄目なのかよく分からなかったので、今回は載せることはできませんが…

興味ある人は覗いてみてください。



終わりに

今まで誰も手をつけなかった分野に目をつけて出版まで漕ぎ着けたのは評価できますし、面白い試みだと思います。

ただ、残念な点は、一般的な一手詰集との明確な違いをダイレクトに感じることができなかった点です。

加えて、“素人が簡単に勝てる”っていうキャッチコピー通りの本になっていない点ですね。

もう少し手数を増やしたり工夫をすれば、需要が増えるかもしれません。
まあ、普通の詰将棋に飽きたって言う人は覗いてみても良いかもね。



因みに、コラムとして石田五段が奨励会時代成績がふるわず苦労した話なんかも載っているので、プロになるのがどれだけ大変か知らない人は読んでみてもいいかもしれません。